Takuma Domoto · Tokyo
間違いが許されない仕事に、AIを入れる。
税理士と社労士の事務所へ、いま実際に動いているシステムを納めています。要件を聞くところから、現場で使われるところまで、1人で通します。
税理士の決算業務を自動にする。ただし、署名するのは税理士のまま
東京の税理士事務所です。決算と申告のまわり——領収書や元帳を読んで仕訳を起こし、二期の比較表を組み、消費税の計算書と内訳の書類を作る。ここでの間違いは不具合ではなく、資格者の責任問題になります。
納めたのは、お客様のClaude Coworkの中で動く5本のスキルです。業務の聞き取り、要件定義、設計、実装、納品、現場での定着支援まで、1人で担当しました。
5本すべてが、この同じ流れの上に乗っています。
現場で使えるものにするために決めた3つ
- モデルは判断する。計算はしない。
転記も計算も書式の適用も、決まった手順の側で処理します。Claudeが解くのは本当に迷う所だけ——たとえば摘要の言葉をどの科目に寄せるか——で、それも版のあるマスタと突き合わせます。だから同じ入力からは同じ答えが出るし、なぜそうなったかを後から説明できます。 - 迷いは、1件ずつ見えるようにする。
出力の1行ごとに3段階のフラグ(確定/確認推奨/要確認)が付きます。見る手間が、書類の枚数ではなく、実際の迷いの量に比例するようになります。 - 帳簿が合わないものは、出さない。
借方と貸方が一致するか、当期の損益が試算表と合うか。検算は「読むかもしれない報告書」ではなく、出力の条件そのものとして流れの中に組み込んであります。
| 入力(会計ソフトから出るもの) | 出力 |
|---|---|
| 領収書・通帳・カード明細 | 会計ソフトへ取り込む仕訳のCSV |
| 補助科目の残高一覧表 | 事務用箋 |
| 事務用箋 | 勘定科目内訳書(申告ソフトへ取り込む形) |
| 二期分の合計残高試算表 | 二期の比較レポート |
| 税区分の集計表 | 消費税計算書 |
運用の側では、事務所が使ってきたExcelのひな形を壊さないようにしています。数式の入ったセルを見つけて触らず、再計算はExcelに任せる。監査の跡が残ったままになります。顧問先ごとの様式の違いはCSVのマスタで吸収し、新しい顧問先は「元の資料」と「手で作った完成形」の1組から対応づけを導き出して足します。WindowsとMacの両方で動きます。
2026年8月には、社労士の事務所でも同じ作り方が動き始めました。資格者が責任を負う仕事という点は同じで、業種が変わっても移せることが分かってきています。
お客様の事務所名は伏せています。中身についてなら、いくらでもお話しできます。
作り方を、そのまま書いています
手の内を隠さない方針で書いています。読んだ人が自分で作れるところまで出します。
「推測しないAI」の作り方 ― 会計の自動化でいちばん危ないのは"それっぽい答え"
分からないことを、分からないまま人へ返す設計の話。上の3段階のフラグは、ここで書いた考え方をそのまま形にしたものです。
Claude Codeで資料を作る ― パワポを開かずにスライドを組む方法
提案資料をブラウザで開ける形に組み、スライドショーとその場での書き換えが付いた1枚のファイルとして出す方法。
AIに作らせると「それじゃない」が出てくる人へ ― 実装の前に尋問させる、9行のスキル
作らせる前に、AIの側から要件を問い詰めさせる。9行で書けます。実物を配っています。
「Claude Codeで顧問先60社」の中身を、図10枚に分解した
他の方の実践の記録を、図に起こして読み解いた1本。人の作ったものを正確に読むところから始めています。
自分の仕事も、自分で自動にしている
お客様へ納めるのと同じ考え方で、自分の手元も組んであります。ここで試して、うまくいったものを納品物へ回しています。
Claude Codeの作業環境そのもの
スキル、フック、小さなエージェント、決まった時刻に動く仕事を1つにまとめた環境です。触ってはいけない場所への書き込みを止める、文書の書きぶりを検査する、といった見張りを常に走らせています。
会議の録画から議事録まで、手を触れずに通す
30分ごとに録画の増えた分だけを見つけ、文字起こしして議事録にし、必要な場所へ配ります。判断の要らない層とAIを呼ぶ層を分けてあるので、録画が無い回はAIを1度も呼びません。
ブラウザで開くスライドを組むキット
PowerPointを開かずに、スライドショーとその場での書き換えが付いた1枚のファイルを出します。上のnote記事のもとになった道具で、そのまま配れる形にしてあります。
資料を、鍵つきのページで渡す仕組み
お客様へ渡す資料を、コマンド1本で見る人を絞ったページにします。鍵の付け忘れは毎週ひとりでに点検が走ります。このページも同じ置き場から出しています。
仕事で使うAIについて、思っていること
作らせるのではなく、迷いを解かせる
間違えられない仕事では、モデルの役目は決まった流れの中で迷いを解くことです。成果物そのものを、確かめずに書かせない。
失敗は、見えていなければならない
確からしさのフラグと検算の関門があって、はじめて「AIを信じる」が「ここだけ見る」に変わります。
使われて、はじめて終わり
納めた後に現場で止まる原因は、たいてい作りではなく渡し方にあります。マニュアルと定着まで自分でやります。